ご自身が後に語られましたが、イメージの中にあったのは、前日に滋賀で観た十一面観音だといいます。それを川上御前の姿に映したと。川上御前のまします大瀧神社にも、実は十一面観音がおられます。龍はその紙漉きに欠かせない水の神の化身でもある。本人の認識を超えたところで、いくつもの存在が重なり合い共鳴して、次々とその筆の先に流れ込んできたのではないだろうか。
artの語源はラテン語のars、ギリシャ語のテクネーに相当し、本来は自然に対置される人間の「技」や「技術」を意味する言葉であったといいます(※)。
何かを呼び、招き、それを形にする人をアーティストとするならば、西元さんはまさにそういう能力を持つ一人。
この小さな和紙の里に、目には見えないがたしかに存在するものを、この地で漉かれた紙の上に降臨させる、一種の儀式をみていたような十五分間。善きものを見せていただき、ありがとうございました。
なおこの墨絵は、「大ふすま展」の会期中(〜11/11)紙の文化博物館にて展示されるとのこと。皆さま是非ぜひご覧になってくださいませ。
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